「アストロラーベ」という器具を知っていますか?

真鍮でできた円盤に、星の地図と時刻の目盛りが刻まれた、

とにかくかっこいい、中世ヨーロッパの天文器具です。

 

見た目からして、複雑に感じますが、

星の位置・日付(地球の公転)・時刻(地球の自転)

——このうち2つがわかれば、残りの1つが出てくる、1800年前の天才的な設計です。

 

この記事では、

✔ 仕組み

✔ 実際の読み方(図解付き)

✔ できること

をできるだけわかりやすく解説します。

 


アストロラーベって何?

ひとことで言うと、「空全体を手のひらサイズに収めた、中世の計算機」です。

くるくる回すだけで——

  • 今何時か がわかる
  • 今夜どの星が見えるか がわかる
  • 日の出・日没が何時か がわかる
  • 方角 がわかる

スマホのアプリで一瞬でわかることを、
この円盤は「星の動きを理解しながら」手で導き出せます。

名前はギリシャ語の「astro(星)+ labio(探すもの)」が由来。

名前の通り、「星を手がかりに、時刻・方角・日付を導き出す道具」です。

歴史は古く、紀元前150年ごろのギリシャに起源を持ちます。

 

アストロラーベは今でも使える?

はい、使えます。

都市部でも、アルクトゥルスやベガなどの明るい1等星であれば十分に観測できます。

実際に夜空で星を合わせると、円盤の上に“今の宇宙”が再現されます。
インテリアではなく、今も機能する天文器具です。

 

 

アストロラーベは、3つの情報と1本の針でできている

アストロラーベは、たった3つの情報と1本の針でできています。

難しい横文字が出てきますが、覚える必要はありません。

 大切なのは「星の場所と日付を合わせると、時刻が出てくる」という構造のイメージだけです。

アストロラーベには、星の場所日付の2つが刻まれています。

この2つを合わせると、時刻が出てくる。それを1本の針で読み取る——それだけです。

 

■ プレート=星の場所が刻まれた盤

本体に収まっている座標盤です。無数の弧の線が刻まれていて、これが「星がどの高さ・どの方向にあるか」を示しています。この線に、レーテの星のポインター(突起)を合わせることで、今の星の場所を再現します。

 

 

■ レーテ=日付と星をつなぐ透かし彫り

透かし彫りの回転する盤で、外周に月名(JANUARIUS=1月、FEBRUARIUS=2月…)が刻まれています。また、星の位置に向かって伸びる小さな突起(ポインター)があり、それぞれに星の名前が刻まれています。

 


■ マーテルとリムブ=時刻を読む外周

本体(マーテル)の外周の目盛り(リムブ)に、0〜24時の時刻が刻まれています。最終的にここで答えを読み取ります。

 


 

■ ルール=時計の針

レーテの上に置かれる1本の細長い定規です。時計の短針と同じように動かして、日付と時刻を結びつけます。両端どちらを読んでも同じ時刻が出ます。


 

 

アストロラーベで時刻を読んでみよう(3ステップ解説)

 

例】8月17日の夜、アルクトゥルス(うしかい座の明るい星)が東の空、高さ20°にある。今何時?

 

① レーテを回して、星のポインターを合わせる

うしかい座の明るい星=「ARCTURUS」のポインターを探し、

レーテを回転させて、プレートの右側(東側)・高度20°の弧の上に乗せます。

※アストロラーベを南向きに持つと、東西が通常の地図と逆になります。東の空の星はプレートの右側に合わせます。

 

② ルールをAUGUSTUS 17日に合わせる

レーテの日付「AUGUSTUS 17日」にルールを合わせます。

 

③ 外周を読む

ルールの端がリムブ(外周の時刻目盛り)を指す数字が現在の時刻です。

リムブは1〜12時表記のため、夜の場合は+12して読みます。 9:50 → 21時50分

 

 

星の場所と日付が決まれば、地球の自転の角度=時刻が自動的に定まる。アストロラーベはその計算を、円盤の回転で一瞬でやってのけます。

 

この感覚、一度味わったらやみつきになります。


他にもこんなことができます

 

やりたいこと できる?
今夜どの星が見えるか確認したい ✅ レーテを見ればわかる
日の出・日没が何時か知りたい ✅ 太陽位置を地平線に合わせて読む
方角(北はどっち?)を知りたい ✅ 裏面のアリダードで測定
木の高さを計りたい ✅ 裏面の測量目盛りで計算できる
昼間に時刻を知りたい ✅ 太陽の高度で測定(投影法で)

 

中世の数学者ライブルクはアストロラーベを「数学の宝石」と呼んだそうですが、

本当にその通りだと思います。

 

100種類以上の計算が、一枚の円盤に詰まっています。

 

裏面について(おまけ)

アストロラーベの裏面には、アリダード(照準器)がついています。

屋外で実際に星や太陽の高さを測りたいときに使うもので、
基本的な時刻読み取りには不要です。

また、不定時(昼の長さを12等分した中世の時間単位)の計算にも使えます。

⚠️太陽を測るときは直接見てはいけません。照準板の小孔から太陽光を投影して測定します。

 

「不定時」って何?

アストロラーベのプレートをよく見ると、下の方にローマ数字(I、II、III…)が書かれています。これは「不定時」という中世の時間単位です。

昼の長さを12等分したもので、夏は長く、冬は短い。現代の「1時間は必ず60分」という概念とは全然違います。

中世の修道院では、修道士がアストロラーベで「第III時」を測り、ミサの開始を告げる鐘を鳴らしていたそうです。この話を知ってから、アストロラーベの見え方が少し変わりました。これはただの計算器じゃなくて、人々の暮らしに、祈りに、旅に、ずっと寄り添ってきた道具なんだと。


まとめ

    アストロラーベは、3つの変数の対応表です。

    星の位置・日付(地球の公転)・時刻(地球の自転)

    ——このうち2つがわかれば、残りの1つが出てきます。

     

    1,000年以上前から使われてきた器具が、今もちゃんと機能する。

     

    それだけ、宇宙の動きは変わっていないということでもあります。

     

    手に取るたびに、そのことを思い出させてくれる。

    それがアストロラーベの、私が一番好きなところかもしれません。

     


    momerath のアストロラーベ

    天文学者の雑貨店 momerath では、スペインの職人が作ったアストロラーベを取り扱っておりいます。 真鍮製・直径10cm / 15cm / 20cm。実際に夜空で使える本格仕様です。

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    笠原愛里